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健康診断は受けるべき? その③健診の項目は

[2020.01.24]

いまさらですが健診の基礎知識をひとつ。けんしんには「健診」と「検診」の2種類の漢字がありますが意味が異なります。簡単にいうと、健康状態を調べる「健診」(例:学校健診、企業健診)と、特定の病気を早期発見するための「検診」(例:〇〇がん検診、骨粗しょう症検診)です。

 

さて健診や検診は受けるべきなのでしょうか。

予防医療は無症状の人を対象に行うため、なんとなく慣習的に行うのではなく明確に利益が害を上回っていることが求められます。

多く行われている企業の法定健診とがん検診の項目についてその科学的根拠の情報をみてみましょう。実はいまの日本の健康診断の項目の中には意味がないとされているものも含まれています。

 

<科学的根拠にもとづく推奨レベル>

推奨レベルA: 実施することを強く勧める(利益が害を大きく上回る)

推奨レベルB: 実施することをすすめる(利益が害を上回る)

推奨レベルC: 推奨できるともできないとも言えない(利益が害をわずかに上回る)

推奨レベルD: 推奨できない(利益より害が大きい)

推奨レベルI: 推奨できるともできないとも言えない(有効性に対するデータがなく比較できない)

 

企業の法定健診などに含まれる項目について推奨レベルを以下に示します。

 

喫煙に関する問診 A

飲酒に関する問診 B

うつに関する問診 B

身長、体重(BMI) B

血圧 A

身体診察 I

聴力検査(一般人) D

視力検査(一般人) I

検尿(蛋白尿) I

検尿(尿糖) D

血液一般 I

HbA1c B

脂質 B

尿酸 I

肝機能 I

心電図 I

胸部X線 I

 

つづいてがん検診の推奨レベルです

胃がん バリウム検査 50歳以上 B

胃がん 内視鏡 50歳以上 B

大腸がん 便潜血 40歳以上 A

大腸がん 内視鏡 40歳以上 C

肺がん 胸部レントゲン±喀痰 40歳以上 B

肺がん 低線量CT 40歳以上 I

子宮頸がん 細胞診 20歳以上 B

乳がん マンモグラフィー 40-74歳 B

 

上記から、がん検診については推奨度がおおむねB以上ありますが、企業の法定健診については科学的な根拠なく実施されている検査が多く含まれていることがわかります。

 

以上のことをふまえて、私の意見を述べると、かかりつけ内科があれば不適切な項目が設定されている健康診断をわざわざうける必要はありません。ですが受けてはダメだとまで言うつもりもありません。特にかかりつけのない方は、適切な健康診断とは言えないながらも受けることができる健診がそれしかないのであればやはりその健診をうけるしかないと思います。

 

最近では健康診断をうけても生命予後はかわらないという衝撃的な発表がありました。そこから安易に健康診断は意味がないというのは行き過ぎであり、個人的にはこの論文の結果からは、受けるだけでなく、その結果をもって適切に行動しないと意味がないことを伝えているととらえています。

 

健康診断をうけたら結果に問題があってもなくても自分が主治医と考えている医師に結果をみてもらいましょう。

 

結論としてはやはり、かかりつけ内科をつくって、患者さんの状況にあわせて検査プランをたて、その結果に応じて対応していく、これが最も優れた予防医療であり、健康管理であると考えています。

 

(参考文献 総合診療のGノート 2017 vol.4-No.3)

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