日本の医療と地域のかかりつけ医ができること
高齢化社会で日本の医療費が高騰し国民皆保険が崩壊するかもしれない、などメディアで取り上げられることも多いです。
今年の10月には消費税が10%にあがりますが、そのうちのいくらかは医療費を含む社会保障費に充てられるでしょう。それでもまだまだ足りないとは思いますがやりくりは国の偉い人が考えてくれると思います。当面増税が続き、医療者側としては診療報酬削減がつづくのでしょう。
ちなみに他の分野の予算で無駄を省いて社会保障費を捻出するというのも現実的ではないようです。たとえば無駄が多いと言われている道路建設などの公共事業の予算が6兆円に対して社会保障給付は120兆円ほどであり、今後150兆くらいまであがるとのことで桁が違います。
患者さんへの影響としては1割負担や2割負担の年齢引き上げや条件の変更があるかどうかが一番大きいところですが、細かい変更も出てくると思います。たとえば現在湿布薬は病院で当たり前のように処方していますがドラッグストアで買うしかなくなるかもしれません。後発品がある薬は特別な理由がない限り先発品は処方できなくなるんじゃないでしょうか。
医療費を抑える医療と患者さんの満足度の高い医療が相反するものであることはよく経験するところです。
その中で医療費削減に貢献でき、患者さんにも間違いなくメリットが大きい医療があります。それは予防医学です。
生活習慣病の予防と管理、がん検診、ワクチン接種などですね。これらを患者さんに提供するのはほとんど私たち地域のかかりつけ医です。
私が楠原クリニックのメインドクターとなって1年が経ちましたが、必ずやりたかったことのひとつがかかりつけ患者さんの予防医学の充実です。1年かけてほとんどの患者さんに検診の受診状況を確認させていただきました。もちろん検診を強制することはありませんが、少なくとも定期的に情報提供はさせていただきますので耳を貸して頂ければと思います。
もう一つ医療費削減と患者さんの満足度が合わせて満たされる地域の開業医の役割があります。それは在宅医療です。細かく話をすると長くなりすぎるので省略しますが、医療機関に通院できなくなった人を訪問診療することで避けられる入院を避け、長期入院を減らすことができます。当院は現在 在宅医療を行なっていないのですが将来的にできるよう準備中です。
また、在宅医療が必要な状態になるのを防ぐことも重要ですね。対策としてはリハビリが中心になります。適切なタイミングで介護保険申請を行い、社会的資源を活用してリハビリを行うよう促すこともかかりつけ医の重要な役割です。
結局かかりつけ医の役割をきちんと果たすことが健康寿命をのばし医療費削減につながると考えています。奈良市の内科かかりつけ医として日本の医療の一部を担っていきたいとおもいます。